2年で40社投資!サイドプロジェクトに賭ける「Weekend Fund」

今では誰もが知っているような有名なサービスであっても、始まりは本業の傍ら、空いた時間のなかで「サイドプロジェクト」だったケースが多かったりします。その代表例としては、Facebook、eBay、Gmail、GitHub等があります。スタートアップと言えば、それ以外のことは脇目も逸らさず集中するイメージがありますが現実は決してそうでないんですね。むしろ、サイドプロジェクトではないケースから始まったプロジェクトの方が少ないかもしれません。

サイドプロジェクトが良しとされている理由として、1) 精神的な余裕がある状態で、創業者の思うがままに運営でき、一方で、2) 本業で忙しいにも関わらず続けられる環境を築けている、が挙げられます。であれば、サイドプロジェクトとして運営していて見込みのあるスタートアップに投資がしたいという思想の元で2017年に始まったVCファンドが「Weekend Fund」です。

Weekend Fundは、Product Huntの創業者 Ryan Hoover氏が代表を務めるVCで、300万ドル(約3億3000万円)規模でスタートし、今日までに40社のスタートアップに投資をしてきました。彼のTwitterによると、平均の出資額は7万5000ドル(約800万円)で、まだプロダクトを出して間もない、もしくはリリース前のものにも意欲的に投資しています。Product Huntの創業者とあって、今まで成功したサービスも、失敗サービスも両方の行方を多く見届けていたはずなので、今後も注目されていくファンドの一つになるでしょう。

Weekend Fundが2年で出資した40社

2年で40社なので、1ヶ月に1社以上のスタートアップに出資していることになります。今回の記事ではWeekend Fundサイトで公開されている全ての会社を紹介していくつもりですが、比較的C向けの分野に注力しているのも特徴かなという印象を受けます。

Breaker(サンフランシスコ)

2016年11月創業。ポッドキャストのSNSを提供しています。アメリカだと、日本以上にポッドキャストが浸透していてスタートアップ界隈だと新聞と同じくらいの立ち位置にある。こうした背景もあり、ポッドキャスト関連のプロダクトは頻繁に登場している。Breakerは、誰がどんなエピソードを聴いてるのか知れるソーシャル要素や、自分に合ったチャンネルを発見できるプラットフォームとなっています。エピソードは販売できるマーケットプレイスも2018年からスタートしています。YC出身でもあります。

Supergreat(ニューヨーク)

2017年創業。美容品に関するレビューを動画で行なうCGMアプリ。美容系ユーチューバーによる化粧品レビューがYoutubeのコンテンツとして人気だけど、それを化粧品単位で探して、そのリアルなレビューを探せるサービスとなっています。他からもシード出資を受けており、現在は合計で1200万ドル(約1.3億円)を調達済みです。

Spectrum(サンフランシスコ)

2017年創業。キーワードやタグベースで作られているコミュニティで自由に交流できるプラットフォーム。主なユーザーは開発者で、言語やフレームワークごとでコミュニティが作られていて、開発者同士が情報交換を行なっています。2018年11月にはGitHubが買収しています。Weekend Fundのポートフォリオで唯一Exit済みのスタートアップ。

Passport

2017年創業。ECの輸出/輸入の仕組みを管理してくれるサービス。国を跨いでの配送になるとトラッキングが困難なことがあります。Amazonとか、大きいECサイトが運営している場合はそこまで緊急でないですが、個人のECが運営している時は結構不安があったりもします。その配送トラッキングをサポートしてれくれます。

Girlboss(ロサンゼルス)

2017年創業。女性の社会進出をテーマとしたSNS。Nasty Galを立ち上げた、女性起業家のシンボル的存在でもあるSophia Amoruso氏が立ち上げた男子禁制のソーシャルサービス。既に600万ドル(約6.6億円)調達済みで、β版が先月公開されたばかり。

Facemoji(ニューヨーク)

2017年創業。オリジナルアバターを作って共有できる、ARアプリ。Snapが買収したBitmoji(FREERIDERがサムネイルで使っているやつ)のARでもっと楽しめるバージョンとなっている。その他にもエンジェル含む13社から出資を受けていることが明らかとなっています。

Intercom(サンフランシスコ)

2011年創業。ウェブサイトに訪れたユーザーを直接やり取りできるコミュニケーションツールを提供しています。Weekend Fundが出資に参加した時点で、既にIntercomはSeries Dラウンドに達していたため、シードの出資ではなさそうです。

Vest

2017年創業。有名な暗号通貨を1分で取引できるアプリを提供しています。アプリのURLをみた感じだと既にリンク切れになっていたり、創業チームの何人かが別の会社に現在勤めていることになっているので既にクローズしてしまったのかもしれません。もしくは、別のサービスを仕込んでいるのかもです。

Kin

Weekend Fund ポートフォリオの中では異質で、自然療法系のアロマを販売しているECサイト。アメリカのコンシューマー業界で、健康や瞑想のような心身ともに改善していく領域に対して注目が集まり始めているのを現地では感じます。

Codeverse(シカゴ)

2017年創業。シカゴで開かれている子供専用のプログラミング教室を提供しています。子供たちが楽しくプログラミングを学べるように、教室の雰囲気からコンテンツ教材までこだわっているのが動画から伝わってくる。現在はシカゴの3箇所に教室が展開されています。

Pixm(ニューヨーク)

2017年創業。フィッシング攻撃からデータを守るセキュリティソフトを提供しています。価格も安価で月額3ドルから契約できます。

Ready Responders(ニューオリンズ)

2016年創業。具合が悪くなった時に15分以内に医師が駆けつけてくれるサービスを提供しています。Uberのモデルが成功してから、救急車を代用するこのモデルは幾つかのスタートアップが挑戦しつつ、未だユニコーンが現れていない状況です。既に540万ドル(約6億円)調達済み。

Coinmine(ロスアンゼルス)

仮想通貨をマイニングできるシンプルなハードウェアを提供している。手のひらサイズのマイニングツールから仮想通貨を掘ることができて、かつアプリでどれくらいマイニングできたのかを可視化できます。シリアルアントレプレナーであるFarbood Nivi氏がCEOを務めているスタートアップ。

Stopwatch

まだランディングページしか用意されていませんでした。

Leaftail Labs(シアトル)

2017年創業。ゲーム制作会社。チームメンバーそれぞれがゲームクリエイターとしての実績と経歴を持つチームとなっていて、質の高いゲームを開発できることが売りになっています。現在は、Nibblityという新しいゲームを開発中となっています。

YOLO

Snapchatのフォロワーから匿名の質問を受け付けられるサービス。日本だと老若男女Twitterを使っているため、質問箱が一気に流行しましたが、アメリカだと特に若い世代の間ではInstagramと、Snapchatで二分されてTwitterを使っている人はほとんどいません。Product Huntで票を集めたあとに出資を受けたのだと思われます。

Oak

2017年創業。瞑想や、呼吸など精神力を鍛える行為をサポートしてくれるアプリ。創業者はDiggや、Kevin Rose Showとメディア界隈で有名なシリアルアントレプレナーのKevin Rose氏。元々、Ryanとも関係があって、Product Huntでもフューチャーされながら出資を受けるに至っています。Kevin Roseのような金持ちでも資金調達を受けるのを考えると、調達はやはりお金だけではないんだなと実感させられます。

TTYL(ロスアンゼルス)

2018年創業。会話のソーシャルアプリを提供しています。Skypeのオンラインモードに似ていて、アプリを開くとオンライン中の友人が表示されて、気軽に会話を始めて、暇つぶしができます。もしくは、今イヤフォンで自分がどんな音楽を聴いているのかをシェアできる、まさに耳のSNSとなっています。

BLUELAND(ニューヨーク)

家を綺麗にする水吹きの石鹸要素にあたるタブレットを定期的にお届けしてくれるD2Cのスタートアップ。タブレットを受け取って、空のペットボトルに水を入れてタブレットを中に入れるだけで水吹きが完成されます。エコなサービス。

Hingeto(サンフランシスコ)

2015年創業。既に確立されたブランドから商品販売ができる、製造メーカーとブランドを繋ぐマーケットプレイスを展開しています。YC出身で、リスクゼロでプロダクトの製造から販売までできるのが最大の特徴となっています。

Chartable(ニューヨーク)

2017年創業。ポッドキャストの分析ツール。アメリカだとYoutuberと同じくらい、ポッドキャストオーナーがいて情報リソースの一つとなっています。創業者がAngel Listの出身であることから、元々Ryanの知り合いだった可能性も高いと考えられます。

Superplastic(ニューヨーク)

2017年創業。プラスチック玩具を販売しています。サイトを見た感じだと、スタートアップというよりは趣味でおもちゃを作っている職人さんがECで販売している風に一見見えます。しかし、創業者のフォロワーが6000人超えていたり、Webによる集客も巧みに行なっていたところに着目されたのかもしれません。

Headspin(パロアルト)

2015年創業。モバイルのパフォーマンスをモニタリングする環境として、デバイスファーム、自動テスト実行環境、モニタリングをノンストップで提供しているサービス。既にSeries Bラウンドまで進んでいて累計調達額は2000万ドル(約22億円)。メルカリも使用しているというブログ記事がありました。

Northstar

月19ドルでスマホ家計簿を提供しています。ただの家計簿でなく、預金やクレジットカードのAPIと連携しており、いつどんなことにお金を消費したのかをタイムライン上で見れるのに加えて、パーソナルアシスタントがお金の管理に関するアドバイスを行なってくれるような仕組みになっています。

Carenote(ロスアンゼルス)

2018年創業。シニア向けのお世話代行サービスを提供しています。世話が必要な家族を持つ人たちの中には忙しくて、すぐに連絡に応答できなかったり、頼みを受けることができなかたったりする現状があって、これらを一括代行して報告書まで作ってくれます。日本のような高齢化社会でもこの問題は急激に進みそうなので一つくらいあってもおかしくない気がします。

Codi(サンフランシスコ)

2018年創業。自宅のリビングルームをコワーキングスペースとして貸し出すことができるサービス。Ryanが注目しているリモート業界で発展していくであろうコワーキングスペース領域を圧巻するような勢いで伸びています。Airbnbのコワーキング版で、部屋を貸し出すことに不自然さを感じないAirbnbのホストを中心にホストを集め、ユーザー側は月額70ドルからプランを選んで時間借りすることができるような仕組みになっています。

Voiceflow(トロント)

2018年創業。音声スキルをコードを書くことなく開発できるプロトタイピングツールを提供しいています。RyanはNo Code領域にも興味を持っていてブログにも、これからはNo Codeで何でも作れるようになることを示唆しています。Voiceflowは創業間もないですが、既に4億円ほど調達し、堅調にサービスを伸ばしています。

FaZe Clan(ロスアンゼルス)

2010年創業。Eスポーツを支援している団体。大会を主催したり、Eスポーツ関連のイベントを組織しています。既に従業員数50人以上の巨大組織です。

Secfi(サンフランシスコ)

2017年創業。非公開企業がIPOするまでの財務計画を専門家と一緒に設計できるツールと、専門家を含めのサービスを提供しています。ユニコーン企業のIPOが多くなっていて、2019年は90社超えになるともされています。しかし、IPOに至るまでの資金繰りは早い段階から意識しておかなければ取り返しのつかないこともあります。こうした設計を支援してくれるサービスです。

Air Garage(サンフランシスコ)

2018年創業。駐車場のマーケットプレイス。教会、ホテル、マンション、個人が所有している土地の駐車場をアプリ経由で貸し出しできる仕組みを提供していて、アプリやWebから簡単に申し込みができるようになっています。

Deel(サンフランシスコ)

2018年創業。フリーランスが請求書を出してから、クライアントから入金を受けるまで1ヶ月かそれ以上かかってしまう場合があります。Deelを使うと、請求書を出したその瞬間に着金を受けられる仕組みになっています。フリーランス取引の中でエスクロー決済が用いられているイメージで、これを使えばお金のトラブルも少なくなるように設計されています。

Lobus

芸術関連の信頼された情報が発信されているメディア。全貌をまだあまり公開されておらず、現在はメディアとして記事配信がされているように見えます。

Infinite Objects

まだ公にされている情報がなく、事前登録のみ受け付けている状況です。

Massless(サンフランシスコ)

2016年創業。VR上で自由に立体物を描けるマジックペンのようなサービスを提供しています。マジックリープのVRバージョンというイメージで、VRハードウェアが普及にするに連れて需要が高まりそうな気がします。現在は2500万ドル(約2.8億円)ほど調達済みです。

Weekend Fundの投資領域

C向けのプロダクトに出資しているイメージが強かったのですが実際にそうでもないように思いました。また、40社のうち6社はステルスでした。

Product Huntに話題になったサービスとは限らない

YOLOや、Oakのように「Product of the Day」に輝いていたプロダクトもあるものの、殆どがProduct Huntでハントすらされていないサービスばかりに感じました。創業者の経歴を見ていると、Angel List出身者(Product HuntはAngel Litsが2016年に買収)もちらほら見かけました。Weekend Fundの公式サイトで公募はしているものの、元々Ryanと繋がりのあった人が多いのかなという印象を受けました。

やはりアメリカ

ほぼアメリカのスタートアップに出資しています。確認できている限りで、サンフランシスコが9社、ロスアンゼルスが4社、そしてニューヨークが6社でアメリカの中心都市を拠点にしている会社ばかりでした。リモートを推奨しているくらいなので、Ryan自身は国関係なく出資をしてくれるとは思いますが、やはり彼がハンズオンできる範囲の人たちが中心にはなるのかなと思ってしまいました。

Ryan Hooverが提唱する4領域

スタートアップを始めるからには市場選択が何よりも大切になります。スタートアップが狙うべきはまだ誰も注目していないけど、これから成長するであろう産業です。Ryanは自身のブログの中で、この領域に対してスタートアップが取り組むべきだと提唱しています。

1) オーディオ/音声

2) デジタルセレブリティ

3) クリエイター向けツール

4) リモートワーク

まず、1) 音声領域 については、既にアメリカ成人の4700万人がスマートスピーカーを保有しているのを前提にスマートスピーカーの周辺領域や、Airpod関連のサービスはどんどん増えていくと見込んでいます。2) デジタルセレブリティ は、初音ミクやV Tuberを指していて、実在していないけど、インターネットで活躍しているインフルエンサーです。アメリカと、Lil MiquelaがCGで出来たInstagramerとして既に1200万フォロワーを持つという影響力を誇っています。 3) クリエイター向けツールは、No Codeのような実開発に関係するものから、PatreonやYoutubeのようなプラットフォームまでを指しています。インターネット広告費がテレビを越したのも最近でこの領域も熱くなっていくでしょう。最後に、 4) リモートワークです。Ryanも、先日サンフランシスコからロスアンゼルスに引っ越して、完全リモートワークとなったそうです。フリーランスに限らず、この働き方は普通になる日も近いため、ここでのサポートツールは伸びていくと見込んでいます。